当直をしていたときのこと。
看護師から点滴についての相談を受けた。
肺癌の患者さんで、手足のむくみが強く、胸水もあり苦しそうなので、点滴を減らした方がいいのではないか、とのこと。
診察に行くと、確かに全身に浮腫がある。
それより何より、予後として明らかにあと数日~1週前後に迫っているという様相である。
点滴の内容を見ると、高カロリー輸液・ネオフィリン点滴、抗生剤点滴など様々な点滴がされており、一日の輸液量は1500ml前後。
正直言って、どれも現在の状況から考えて不必要なものばかり。
しかし、看護師からは
「主治医から『呼吸促迫があり、呼吸筋の疲労を回復させるために栄養が必要である(から高カロリーは続ける)』と言われている」
とのこと。
耳を疑った。
え・い・よ・う~?だ~?
予後が月単位で見込める患者にきちんとした栄養療法を行わず、餓死させる緩和医もいるので、栄養療法を考えることは末期といえども必要である。
しかし、予後が数日に迫っている患者に対して高カロリー輸液をすることで、どれくらいメリットがあるというのか?
呼吸苦が楽になるとでもいうのか?
全身をむくませ、肺水腫を進行させる苦痛を上回るQOLの改善があるとでも?
主治医は一応、緩和ケアを研修している研修医である。
緩和医は「総合内科医」であるべきだが、
内科医でありすぎるのも緩和の現場では問題である。
別の症例で、胸水を減らすために利尿剤をかけまくっている例も見た。
しかし、この患者さん、元々呼吸苦はない。
むしろ血管内脱水が進行し、臓器機能が落ちてきている。
治療できるところは積極的に治療しようという姿勢は悪くないが、レントゲン写真を治療しても意味がないのである。
先の例も、机上の知識を現実に当てはめようとしているだけのように見える。
患者さんをきちんと診察し、
ゴールをお互いに共有し、
現実にあわせて知識を活用する必要がある。
ちなみに先の患者さんに対して、
「点滴減らします」の説明をしたところ、
「栄養は大事」との説明でも受けているのか、家族に嫌な顔をされてしまった。
うーん・・・。
ちなみに、終末期の輸液についてのreviewがAnnals of Oncology advance accessにあります。
興味のある方はどうぞ。
Artificial nutrition and hydration in the last week of life in
cancer patients. A systematic literature review of
practices and effects
N. J. H. Raijmakers, L. van Zuylen, M. Costantini, A. Caraceni, J. Clark, G. Lundquist,
R. Voltz, J. E. Ellershaw & A. van der Heide on behalf of OPCARE
看護師から点滴についての相談を受けた。
肺癌の患者さんで、手足のむくみが強く、胸水もあり苦しそうなので、点滴を減らした方がいいのではないか、とのこと。
診察に行くと、確かに全身に浮腫がある。
それより何より、予後として明らかにあと数日~1週前後に迫っているという様相である。
点滴の内容を見ると、高カロリー輸液・ネオフィリン点滴、抗生剤点滴など様々な点滴がされており、一日の輸液量は1500ml前後。
正直言って、どれも現在の状況から考えて不必要なものばかり。
しかし、看護師からは
「主治医から『呼吸促迫があり、呼吸筋の疲労を回復させるために栄養が必要である(から高カロリーは続ける)』と言われている」
とのこと。
耳を疑った。
え・い・よ・う~?だ~?
予後が月単位で見込める患者にきちんとした栄養療法を行わず、餓死させる緩和医もいるので、栄養療法を考えることは末期といえども必要である。
しかし、予後が数日に迫っている患者に対して高カロリー輸液をすることで、どれくらいメリットがあるというのか?
呼吸苦が楽になるとでもいうのか?
全身をむくませ、肺水腫を進行させる苦痛を上回るQOLの改善があるとでも?
主治医は一応、緩和ケアを研修している研修医である。
緩和医は「総合内科医」であるべきだが、
内科医でありすぎるのも緩和の現場では問題である。
別の症例で、胸水を減らすために利尿剤をかけまくっている例も見た。
しかし、この患者さん、元々呼吸苦はない。
むしろ血管内脱水が進行し、臓器機能が落ちてきている。
治療できるところは積極的に治療しようという姿勢は悪くないが、レントゲン写真を治療しても意味がないのである。
先の例も、机上の知識を現実に当てはめようとしているだけのように見える。
患者さんをきちんと診察し、
ゴールをお互いに共有し、
現実にあわせて知識を活用する必要がある。
ちなみに先の患者さんに対して、
「点滴減らします」の説明をしたところ、
「栄養は大事」との説明でも受けているのか、家族に嫌な顔をされてしまった。
うーん・・・。
ちなみに、終末期の輸液についてのreviewがAnnals of Oncology advance accessにあります。
興味のある方はどうぞ。
Artificial nutrition and hydration in the last week of life in
cancer patients. A systematic literature review of
practices and effects
N. J. H. Raijmakers, L. van Zuylen, M. Costantini, A. Caraceni, J. Clark, G. Lundquist,
R. Voltz, J. E. Ellershaw & A. van der Heide on behalf of OPCARE
はじめまして。
返信削除ブログ拝見させて頂きました。
もし宜しければ教えて頂けると嬉しいです。
父が胃ガン・腹膜播種・腹水ありです。
1ヶ月前より口からの摂取が水も含め一切できなくなりました。それまでは普通に生活をしておりましたが、口からの摂取ができなくなった為、入院し高カロリー点滴をしてます。
点滴はフルカリック2号というのを1日一袋です(800カロリー程)
予後は月単位と言われました。
口から栄養が取れない為か、入院してからは一気に衰弱し、今ではトイレ以外は車イスです。
新聞も読む気力・体力もなくなってしまいました。
今までは元気だったとしても、口から何も摂取ができなくなった時点でやはりガンの終末期と考え、高カロリー点滴も800カロリーもあれば十分なのでしょうか?
痛みとかもないので、カロリーを増やせばもっと元気になるのではないか、と思ってしまいます。
その人の状態にもよると思うのですが、一般的に口から摂取ができない人で、予後が月単位だと、高カロリー点滴は一般的にどれくらい1日に点滴をするものなのでしょうか?
お返事頂けましたら嬉しいです
宜しく御願い致します
コメントありがとうございます。
返信削除ご本人をみていないので責任あるコメントはできませんが、腹水が相当にあるなら、あまりたくさんの水分をいれることの方が本人の苦痛を増すため、栄養を入れるために点滴の量を増やしたりは一般的にはしないことが多いです。
あとは本人の活動量なども含めて決めることが多いですが、適当なカロリー量、というのはこの時期の患者さんには個人差も多いのでここでの回答は難しいです。
あまりご希望に添えず申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。
こんばんは。
返信削除お返事どうもありがとうございました!
やはり腹水があると、水分を増やしたりとかはあまりしないことの方が一般的なんですね。
どうもありがとうございました!