投稿

1月, 2013の投稿を表示しています

免疫療法を宗教的な観点から考え直す

私は腫瘍内科医として、免疫療法は否定する立場です。
もちろん、きちんとした治験のルールなどに則って研究中のがんワクチンなどは除きます。
ここでいう免疫療法とは、患者さんから自費診療でお金を取ってなおかつ効果の不明な治療法を行っている、各種のクリニックなどです(もちろん、上記のがんワクチンについても、「研究中」なので効果は不明ですが)。
免疫療法はもちろん、将来は希望の持てる治療法のひとつだと思いますし、現在研究中の各治験については、応援したいと思っています。しかし、それらはまだ研究中で、今のところ確実に効果がある(生存を延ばす)と確認された治療はありませんし、自費診療で受けられる免疫療法は、上記のような研究中の治療とは全く別のものです。

私もこれまで多くの患者さんを診てきて、何十名もの方に「いい治療法があるって聞いたんですけど・・・」と言われてきました。
私はその都度、それらの治療法の科学的根拠のなさ、言うなれば人体実験を自らお金を払って受けているようなもの、がんビジネス(金儲けだけ)という場合もある、など、丁寧に説明してきました。
もちろん、それで思いとどまってくれる方もいるのですが、「それでもやっぱり受けてみたいから」と治療を受けられる方も大勢いました。

私は、専門家としてこれだけ熱心に科学的に、そして感情にも訴えるように説明してきたつもりでしたが、それでも免疫療法を受けたいという方が多いということに悩みました。

そうしているときに「患者さんは万にひとつでも効く可能性があるかも、と思える治療なら試してみたいと思うんじゃないかな」という意見を伺い、まあ私は「万に一つも」効かないと思っていますし、残りの9999名はどうするんだろうか、とも思うのですが、そう考えているうちに

「これは、宗教じみているんじゃないか」

と思うようになってきました。
まさに「信じるものは救われる」の世界で、私がいくら「やめなさい」と言っても「信じた私たちは幸福だから」と言われると、本当の意味では何とも言えないのではないか、だとしたら私が反対している、このこころの動きは何なのだ?ということに思い至ったわけです。
前ふりが長くなりましたが、今回は、この「免疫療法の宗教的側面」という部分から、自分も問い直してみたいと思います(もちろん私は宗教学者でも何でもないから、ここで私の書いていることは素人…

サロンにある哲学~患者さんのための本をどうやって選んでいるか?

イメージ
本日、「ほっとサロンいだ」がオープンしました!
多くの方々に来て頂いたようで、ありがとうございました。

さて、ほっとサロンは「患者図書館」の意味合いも持っていますが、患者さんに関係あるものなら何でも置いているか、というとそうではありません。
一般的な待合室にある、雑多な小説などとは異なり「ある一定の哲学」を中に持ちたいと思っています。


現在、主にサロンに置いてあるものは以下に分類されます。

・がんに関するもの
・医学一般に関するもの
・生、老、死に関わるもの
・プログラムに関するもの
・日本人として「生きる力」を高揚するもの

がんに関するものは、ガイドラインや術後のレシピ本などを含みます。
精神的ケアや家族サポートなどの本も重要ですね。

医学一般に関わるものとなるとかなり幅広いですが、医学系の読み物と検査・病気の資料系などが入ると思います。
実は、上記の2分野については、医師が読むような専門書も置いています。
患者さん向けの簡単な本だけではなく、より専門的な情報が欲しいというニーズがあると考えるためです。

生、老、死に関わるものは、ここへ来て本を読んで下さった皆様が「老いて、死んでいくこと、そしてそのためにどう生きるか」を考えてもらえるきっかけとなる本を選んでいます。
こういうテーマは、例えば私が大上段に構えて、「老いるとはこういうことです」と話す機会もありませんし、そもそも経験もしていない自分が、そんなテーマで偉そうに話すなど、聞いてる方もうんざりでしょう。
しかし、「老いる」というテーマについて「こんな良さそうな本がありますよ」というのは嫌味がないのではないかな~と思うのです。嫌なら読まなければ良いわけですし。
扱うのが非常に難しいけど、大切なテーマだからこそ、少しでも興味を持って、手にとってもらえたら嬉しいなと思っています。

プログラムに関するもの、というカテゴリーについて。
「プログラム」とはサロン内で時間を区切って行われる各種のサポートプログラムです。
これまで行われていた「がんサロン」も、プログラムのひとつとして登録されています。
個人的に楽しみなのは「日本茶を楽しむ」プログラムで、これは日本茶を喫することで、その中にある日本人としての精神性や安らぎへの気づきを得ることを狙いとしてます(第2、第4月曜の14:00~15:00)。
まあ、単に「おいしいお茶飲みた…

ほっとサロンいだ いよいよオープン!

イメージ
以前のブログでも告知していましたが、1/7に「ほっとサロンいだ」がいよいよ正式オープンします! 以前の写真と比べて、かなりたくさん物も増えているのがわかるかと思います。資金難から椅子も買えなかったのですが、様々な方からの寄付によりなんとか席数も確保できました。 コンセプトは前にも書きましたが
「病院の中にあり、病院の中ではない場所」 「自分の生きる力を取り戻すための場所」 「とりあえずここにくれば、探していたものが見つかる場所」 ここは図書館でもあり、美術館でもあり、もうひとつの自宅のようでもあります。 私たちの出発点はイギリスにある「マギーズ・キャンサー・ケアリングセンター」にあります。これは、乳がんで療養していたマギーさんの、こんな言葉から始まった施設でした。 「確かに病院ではいいケアをしてくれているし、臨床面、技術面ではしっかりと治療してくれる。しかし、私を支援してくれる家族や友達も、同時にいろいろな心配事や不安を抱えているのに、そのことに対するサポートが十分ではないと思う」 そして彼女は、「がん患者はとても弱い立場におかれている。しかも不安は非常に強くなっている。その中で支援や情報を求めるというのは、非常に大きなストレスになる。だから、そこに行けば自分たちの求めているものが全て手に入るような、そういうところを作りたい」と言ったのです。 『メディカルタウンの再生力』30年後の医療の姿を考える会編から もちろん、本当のマギーズには何もかも遠く及びませんが、少しでも近づけるよう、これからも努力していきます。 また、今のところ、このサロンは基本的に寄付で成り立っていますので、何かが無くなったり壊れたからといって、すぐに補充できる、というほどの資金面での体力はありません。是非、皆様に大事にお使い頂ければ幸いです。

昨年の振り返りと今年のビジョン

新年明けてしばらく経つが、ここで昨年の主な仕事を振り返って見たいと思う。 2012年4月、私は川崎に戻ってきて緩和ケアチームの所属となった。私の以前は、チーム加算を取れない兼任医師によるチームだったため、専従医師によるチームは数年ぶり、そして相棒となる専従ナースもまた新任という、新米チームだった。 しかし、それが良かったのだろうか。前任チームから引き継いだ患者はわずか3人、という、しばらくは「何してるの?」というところから始まったものの、あれよあれよとチーム依頼は増え、一番多いときでは30名を超える受け持ち、常時で20名前後の依頼件数があるチームへ成長した。延べ依頼件数も昨年の倍以上に伸ばした。初めのうちは「せめて自分たちの給料分くらいは仕事しないと」と焦っていたのが嘘のように、今ではもう一人くらいスタッフを増やして欲しいくらいだ。 さて、チーム初期の、まだ受け持ち患者数が少ない頃の余剰の時間は何に利用したか? システムの改革である。とにかく、がん拠点病院を名乗るにはおこがましいほど、体裁は整っているものの、内容はひどい、という点が多かったのである。 その第一が「がんサロン」の立て直し。我々が来る前、がんサロンは年間20回以上開催されていたが、その参加総人数が7名、という有様だった。つまりは多くの回は参加者なし、来ても一人だけ、という状況。井田病院のがんサロンは関東圏内でもかなり早期に設立されたことが自慢だったようだが、もう何年間も何の改革もされないまま放置されていた。そこで我々チームが入って改革を行ったことにより、初回の参加者数ですでに昨年までの総参加者数をオーバーする盛況ぶり。今の昼・夜の二部構成にしてからの半年間で、延べ70名弱の参加者にご参加頂けた。ちなみに、夜のがんサロンを定期的に開催しているのは現在のところ日本全国当院だけだろうと思う。 他には、 ・その他、がん拠点病院としての内容向上への参画 ・日本緩和医療学会「若手医師フォーラム」の主催 ・日本語論文3本掲載、1本投稿中 ・Panitumumabのphase2試験の管理事務局運営および学会発表 ・緩和医療学会でのポスター発表 ・非がん緩和ケアチームおよび非がん緩和ケア病床の立ち上げ ・オンコロジー・緩和ケアスキルアップセミナーの院内立ち上げ ・ケアセンター研修医教育研修システムの立ち上げ(朝ショー…