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医療の呪縛

緩和医療は治癒が困難となった疾患を抱える患者さんに対して「命の長さを延ばすことも、縮めることもしない」医療であるとされている。

 緩和医療の考え方は、だいぶ世の中に広まってきて、死を見据えてどうやって充実した生を生きるか、という部分が重要視されるようになってきた。
 結果として、延命効果の判然としない人工呼吸器の装着や胃ろう造設については、患者さん側も希望しない、こちら側も勧めない、という事例が増えてきたと思う。

 そういった部分をとらえて「緩和では、検査とか治療とかは何もしてくれないんですか」と問われることもある。もちろん、患者さんに対して「何もしない」というのは極論である。
 ただ、「どこまでやるべきか」という部分については、常に悩まされるところではある。

 私はそれを「医療の呪縛」だと思っている。

 私が、最初に研修を受けた病院では、緩和医療を教えてくれた先生は極力医療的なことをしない、という方針であった(というように私には見えた)。熱が出ても下血があっても意識レベルが下がっても検査も処置もしない。
「何もしない医師」に私には映った。
 若かった私は日々それに不満があり、ある時
「こんな状態になって検査のひとつもしないんですか!」
と、くってかかった記憶がある。その時に先生は、
「もう残された時間が少ないときに、検査だ、処置だ、とバタバタして、本人や家族にとっていいことはない」
と穏やかにおっしゃられた。
 当時の私は納得できず、その病院を飛び出してしまったが(それだけが理由ではないが)、今となっては自分自身がその「何もしない医師」である。

 もちろん、本当に「何もしない」わけではない。
 症状を和らげ、患者さん・家族と対話し、死に向かいながら生きる支えとなるように考えながら診療している。
 ただ、ある程度病状が進んできた状況で、大きな処置はしないにしても、ある程度簡便な処置(採血や点滴など)で時間を延ばせるかもしれない、というときに、私は「医療の呪縛」と闘わなければならない。
 医療は「死に抗い、命を延ばす学問である」という側面もある。少なくとも一時期までは、それこそが絶対的な正義で、医師はどんな状況でも諦めず1分1秒でも命を延ばすことこそが至上命題とされてきた。私たちの深層心理にはそういう意識はいまだにある。

 それが今は変わってきた、というのは前に述べた通りだが、この呪縛がい…

昨年の振り返りと2014年のビジョン

昨年1月のブログでも書いたとおり「活動を外向きに広げる」を2013年のテーマとして活動してきた。

 1月に「こすぎナイトキャンパス(地域における読書会)」に参加したことから、この1年間はスタートしたといえる。その勉強会に参加している方々とのつながりから、まちづくりのワークショップへの参加や、「社会と医療をつなげる」ことを目的とした様々な勉強会や集会に参加した1年間になった。
 中でも、「まち・ひと・せいかつワークショップ」で1年間かけて武蔵小杉のまちづくりを考えたこと、そして「待合室から医療を変えようプロジェクト」の講演会に伺って、病院と地域をつなげることのヒントを頂いたことが、2014年へつながる活動へ結びついている。

 2014年につながる大きな活動のひとつが「+Care project」だ。これはワークショップ・イベントの実施や、既に事業を行っている方々とのコラボレーションなどを通じて、地域のヘルスリテラシーを高め、小杉を中心とした地域を「病気にならないまち/病気になっても安心して暮らせるまち」として、ずっと健康に安心して暮らせる地域にしていくことを目的とするプロジェクトで、2014年1月から地域のNPOや企業、医療者などが連携して進めていくことになっている。私はプロジェクトマネージャーとして、まず今年はこのプロジェクトを地域へ広めていくことを目標としたい。
 もうひとつの大きな活動は「レストランサポートプロジェクト」である。これは前述の「待合室から医療を変えようプロジェクト」の後援を受けた企画で、医療者と市民が一緒に、レストランという場を通じて「食」を考え直す、という全国でも初めての企画である。昨年4月から活動を続けてきたが、本邦において病院レストランを考える上でのモデルとなる知見を提供していくことをめざし、今年2月ころに成果を発表できるよう準備を進めている。

 また、院内では「ほっとサロンいだ」を開設し、1年間その運営を行ってこれたことも大きな成果であった。これは院内の様々な方々やボランティアさん達のご協力があってこそだが、マギーズセンターに少しでも近づけるよう活動を続け、開設当初とは比べものにならないくらい、その質も向上した。サロンを通じて「地域と病院をつなげる」という目標も、多くの企業や市民の方々に入って頂けたことで、成果を上げられたのではないかと思っている。…