『「残された時間」を告げるとき~余命の告知Ver.3.1』がいよいよ発売!

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実際、がんや高齢者医療に携わっている医療者であれば「あと、どれくらい生きられるのでしょうか?」という質問は、患者本人や家族からしばしば問われるでしょう。
これまでは、その「問い」に対して個々人の経験からの中で試行錯誤したり、同僚医師のやり方を真似ることで対応せざるを得ませんでした。「余命をどのように伝えるべきなのか」について、国内で書かれた参考書はほとんどなかったからです。
海外の教科書には、記述がありました。しかし、その内容は必ずしも日本人にもそのまま当てはめられるものとは感じられませんでした。
なので私は、海外でのエビデンス、そして近年研究されつつある日本でのエビデンスをまとめつつ、日本古来からの文化や死生観を併せて記述することで、日本国内でも通用する「余命の告知」の方法をまとめたいと思ったのです。

伝え方がわからない、どのように伝えても患者を傷つけるだろうことには変わりない…それであれば「余命を伝えるべきではない」と考えることにも一理あります。
実際、私自身がそのように考え、そのようにしていたこともありました。
しかし、そのコミュニケーションでは、明らかに満足いかないという表情を浮かべる方々が数多くいました。
その時思ったのです。「患者さんたちはどうして知りたがっているんだろう?」と。

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症例:斉藤隆史さん(52歳 男性)

斉藤さんは都内の大手商社で部長職を務め、大きなプロジェクトを数多く動かしてきました。しかし、2年前に胃の不調を訴え、近医で胃カメラを施行したところ、胃癌の診断となりました。
近隣の総合病院で手術を行いましたが、1年前に腹膜転移にて再発と診断されました。その後は腫瘍内科を紹介され、抗がん剤治療を受けることに。しかし副作用も強く、薬剤の減量や変更などを行いながらなんとか続けてきましたが、「副作用のため仕事に集中できない。私にとっては今の仕事を続けられることの方が大切なのです」と、抗がん剤治療を断念。その後は地元の緩和ケア医を紹介され、通院を継続しながら会社にも通勤していました。幸いにも、がんに伴う症状はほとんどなく、
「このままもう少しでも仕事が続けられたらいい」
と、斉藤さんは願っていました。しかし、いま動かしているプロジェクトのうち、最も重要なものは少なくとも半年後まで目処をつけることは難しい状況です。
「早めに誰か他の人に、プロジェクトの管理を任せた方がいいかな…」
「いや、でもこの仕事を成し遂げるために抗がん剤治療まで止めたのに…。ここで他の人間になんて任せられるものか…!」
と、思いは揺れます。そこで本日の定期の外来で、斉藤さんは緩和ケアの主治医に、今後の見通しについて聞いてみようかと考えています。
一方、斉藤さんの主治医は30代で、緩和ケアの経験はまだ浅いが、まじめで朗らかなことから、患者にも人気のある医師でした。斉藤さんは、1か月前にこの医師に受診し、
「なんだか頼りない先生だな」
と思ったものの、
「まあ、悪い人ではないのだろう。まだ若いしな」
という印象を持っていました。さて、今日の面談の行方はどうなるでしょうか。 



 このマンガのように「本当は知りたかったのに」という例が中にはあるので、「余命については伝えない」という方法では不十分という場合もあります。また、患者さんのほうも「先生が何も言わないということは、大丈夫なのだろう」と考えて、仕事の引継ぎや家族・友人への別れが不十分なままに、一気に病状が悪くなって「やりたかったことができなくなってしまった」ということが発生することもあります。
 患者さんが「何をどこまで知りたいか」ということを評価せずに、一律に「余命は告知すべきではない」と決めてかかることは、患者さんにとって好ましいことではありません。
まず、「どうしてそれを知りたいと思ったのか」「自分ではどれくらい生きられると考えたりしたことがあるか」といったことを丁寧な対話の中から探りつつ、必要であれば余命についても伝えていく、ということを考えていかなければなりません。

 では、それを伝えていくにしてもただ単に「そうですね、3ヶ月です」という伝え方では全く不十分です。そのような不遠慮な伝え方をするくらいなら、確かに「何も伝えない」ほうがまだ良いと言えるでしょう。
 実際にどのような伝え方のバリエーションが考えられるのか?それについてはまた次回のブログでご紹介します。

 今すぐ知りたい!もっと詳しく知りたい!という方は、ぜひ『「残された時間」を告げるとき~余命の告知Ver.3.1』をお買い求めいただき、本編をお読みください!

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