教祖になりたがる医師

緩和ケアの医療者なのに、特定の治療法が「正しい」って言ってしまうという事例があることを知る。
先日は、「全ての抗がん治療をあきらめないと緩和ケア病棟には行けない」っていうのもあったけど、どうして医療者側が自分たちの信念を患者に押し付け、人生を操作しようとするのか。

そりゃあ、「抗がん剤はもうありません」って言われて絶望した患者さんに「こんないい治療があるよ」って言えば、患者さんは信じると思うよ。
でも、それで患者さんの希望をつないだと思っているなら勘違いも甚だしい。

効かないかもしれないけど、効くって信じて何らかの代替治療を続けるのが希望?
患者さんが自分でそう信じるのはいい。
でも医師がよかれと思ってそれを勧めているのだとしたら、もうそれは完全に「医者っぽい」考えの塊。
だとしたら、その患者さんの人生はどこまで行っても絶望しかない。
気づくのを先延ばしにするだけ。

患者さんの希望は、患者さんの中にしかない。
誰かが外から与えられるものじゃない
探す手伝いはできるけどね。

緩和ケア医療者は、自分の死生観はしっかり持っておくべきだけど、それは切り分けて、真っ新な状態で患者さんと向き合えるようでないと、患者さんの人生を操作することになる。
医療だって宗教の一種と考えて相対的にみれば、もう少し自分たちがやっていることが冷静に観られるようになる。
宗教なんて非科学的だ、と言っている医療者が好んで医療という宗教の教祖になりたがるなんて滑稽じゃないか。

医師は神様でも仏様でもないよ。
私たちを拝んでもあなたの人生の道が見つかることはない。
私たちができることは、考えの枠組みを披歴することと、薬という手段でのちょっとした手伝いだけ。
人生の道、あなたの神様はあなたの中から見つけるしかない。

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