Pt's Voice024:心がかるくなりました

ゆっくりと相談室に入ってきたその人は
青白い顔をして
足取りも重かった

家族として、どう支えればいいかわからない

その人の夫はがんを抱え闘っていた
その人は、がんと闘う夫を支えていた
しかし、その人を支える人は誰もいなかった

夫がつらいのはわかります
頑張っているのもわかります
でも、夫には先生がついている
看護師さんがついてる
私には、誰もいません
夫もつらいですが、夫を喪うかもしれない私もつらい
でも周りからは「妻として彼を支えないとね」と責められます
どうしたらいいのか・・・

その人はひたすら想いを吐き出す
涙もぼろぼろとこぼれ落ちる

そしてひとしきり話したあと

ごめんなさい、話しこんでしまって
そろそろ帰ります

涙をふきながら、

また来てもいいですか
心がかるくなりました

とその人は帰っていった

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Pt's Voice=ペイシェンツ・ボイスは「患者の声」をデジタルアーカイブとして遺すプロジェクトです。

有名人の言葉は時を超え、後世に語り継がれ、その言葉は死ぬことはありません。
一方で、その人生を懸命に生きたひとりひとりの言葉も、その言葉に負けることがない輝きを持っています。
それらの言葉の生を引き継いでいくために、記録を残していきたいと思います(毎週月曜日更新)。


Pt's Voiceでは私の解釈は一切記しません。
患者・家族と医療者との対話のみです。
その生の声から何を学ぶか?それは皆さん次第です。

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